恋してアイビー
なれない子供との触れ合いに固まる私と、何故だが超大喜びの少女。
良くも悪くも人目を引きつける光景に、何やら人が近づいてくるのがわかった。
見れば遊園地の係員のよう。
あ、よかった。
このまま、迷子センターにでも連れて言ってもらえれば、おそらく私と激似の(?)この子の母親も見つかるだろう。
あからさまにほっとした私は、係員を手を挙げて呼ぼうとした。
「すいません、こっ…ち………」
が、その途中で言葉は途切れてしまう。
それは、私に抱きつく少女が耳元で囁いたから。
「イヤだ……」と。
覗き込むと表情は固く、怯えたように小さな手で私の服を握りしめている。
私はまたしても困惑した。
今度はハテナマークが増加した。
なんで?
私は母親じゃないのに。
本当のお母さんに合わせてあげようとしてるのに。
そんな考えを頭で巡らせていると、係員が近くまでやってきてしまっていた。
「はあ、はあ…すいません。その子迷子みたいで、迷子センターに行こうとしたら走り出しちゃって……ああ、保護者さんですか?」
やけに息を切らしてる。
相当走らされたのだろう。
私はもう一度少女を見つめる。
傍目にも相当に嫌がっている様子だ。
一体何がそんなに嫌なのだろう。
けれどそこはお転婆な妹を抱える、姉としての性分が出たのかもしれない。
すっかり私の背中に隠れている彼女に、震える彼女に、らしくも無い覚悟を決めてしまった。
「はい。娘がご迷惑をおかけしました」