君の声がきこえたら。
何十回、何百回と腕を通した制服に
今日もまた腕を通して
“無”の私に変身した。
「愛苗(かなえ)、お父さんが待っているんだから、早くしなさい。」
「はい。」
少しイライラしたように、私の扉の向こうでお母さんが話す。
さっきの夢の余韻のせいなのか
そんな小さな冷たさにさえ、チクリと胸が痛んだ。
この家に生まれて14年。
その14年で分かったことがある。
どうやらお母さんとお父さんも
私にはあまり興味が無いみたい。
ベッドの上にまぬけに転がる鞄を急いで手に取り、お父さんの待つ車へと向かった。
すれ違ったときふと目に入ったお母さんの顔は、口はへの字で、目の奥で私を睨んでいるように見えて、少し怖かったけど