胸いっぱいGYU

また年が流れて今度は久住さんと会うことすらなくなってしまった。

オレも今のこの状況に流されて大学と香奈の部屋の往復くらいだ。

今では沙都のことを強く想うこともなくなってきた。



あの子はきっと大丈夫。

自分にそう言い聞かせてきたんだ。


「諒、シャワーを浴びるから手伝ってちょうだい」

香奈が脱衣所でオレを呼んでいる。

こんな生活が続いて何年になるんだろう。

不思議と香奈はこんな生活に飽きていないらしい。

すぐに男をとっかえひっかえ変えるくらい飽きっぽいのに・・。

まぁ・・オレはあいつの言いなりだからそんなレベルにも達していないワケだけど・・。

オレは相変わらず香奈の召使いの一人に過ぎない。



「ねぇ、あなた留学の話があるんですってね」

オレはシャワーから出た香奈の身体をバスタオルでふきながら黙って話を聞いていた。

「・・・・」

今香奈が言ったようにオレには留学の話がある。

オレが師事している先生がヨーロッパの方で声がかかってオレにも一緒についてきて勉強しろと言ってくれていた。

オレが絵を描き始めてから憧れていたヨーロッパでの勉強・・。

嬉しくないはずがなかった。


ただ・・

オレの今の立場を考えると・・それは困難だと思っていた。




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