胸いっぱいGYU
「なにを黙っているの?諒」
「いや・・別に・・」
いたって冷静に興味のない風に答えた。
沙都を失ってから自分の望みは一切叶わないという現実が目の前にあるオレは手が届く距離にあるチャンスでさえ諦めていた。
「やーね、行ってきたらいいじゃない」
「・・・!?」
オレは自分の耳を疑った。
香奈の口からそんなセリフを聞くとは思わなかった。
「い、いいのか!?」
オレは久々に声のテンションが上がった。
「いいのかって・・。私、あなたの絵の邪魔をしたことがあったかしら?」
「・・・」
・・そういえば・・たしかに香奈は絵のことに関してはオレの邪魔は一切しなかった。
ますますコイツの意図がわからない・・。
沙都とのことは邪魔をし、挙げ句オレを男娼のように扱う。
だけど、それ以外はオレのことに干渉はしない。
「だからといってあっちへいってもあなたが私に飼われているということ、忘れないでちょうだいね」
「・・・わかってるよ」
オレに解放という二文字がないことを改めて確認させられた。