胸いっぱいGYU
出発を明日に控えたオレは久しぶりに久住さんに会うことになった。
空港近くのホテルに滞在していたオレはそのホテルのバーで待つことにした。
久住さんの通っている大学もちょうどこの近くで都合もいい。
先にバーについたオレは一足先に一杯飲んでいた。
今でも思い出す・・。
学校の屋上でコーヒーを飲みながら授業をサボったこと。
そして、フルーツ牛乳を飲んだあの日のことを・・。
「諒、待ったか?」
過去に浸っていたオレの横に待ち人が立っていた。
「久住さん・・」
少し遅れてきた久住さんはジントニックを頼んで席に座った。
「ひさしぶりだな、諒。元気だったか?」
久住さんは出てきたジントニックを一口飲んでオレに聞いた。
オレも目の前にあるワインクーラーを一口飲む。
「相変わらず、ですよ」
「・・そうか、相変わらず、か・・」
人のこと言えないけど、久住さんの表情にも翳りがあった。
久住さんは大事な人を亡くしていた。
オレはどれだけ久住さんがその人のことを愛していたかよく知っている。
オレが学校にあまり行かなくなったころのことだった。
沙都のことで正直まいっていたオレも精神的にガタガタで、あのころ久住さんを思いやる余裕すらなかった。