胸いっぱいGYU
「いや、俺はお前と沙都が付き合ってよかったと思ってる。お前の今の立場を考えると申し訳ないけど・・」
久住さんはオレの意表をついてきた。
だってどう考えても周りから見れば沙都はオレと付き合わなければよかったと思うに違いないのに・・。
オレは飲もうとしたグラスを手に持ったまま固まってしまった。
「あの・・久住さん・・?」
「沙都はあのとき小学生だったけどアイツのお前を想う気持ちは本物だったよ・・。だからこそ余計に見てられなかった・・。だけど、沙都は幸せだと思う。・・・本人は気付いてないけどな・・」
「幸せ・・?沙都が・・?」
「・・ああ。アイツが他の誰かと知り合って・・付き合って・・そのとき初めてわかると思うよ。自分がどれだけ愛し愛されていたのか・・・」
・・・酒のせいか・・?
目から止めどもなく涙が溢れてきた。
そう、オレは今でも沙都と付き合っていた日々を大切に思っている。
そして沙都を愛したこの気持ちはオレの宝物だと・・その気持ちはずっと変わらなかった。
たとえ、自分を犠牲にしてでも沙都に幸せになってほしかった。
何も後悔なんてしていない。
ただ、願わくば・・オレの手で幸せにしたかった・・。
どんどん涙が出てくる。
まるで今まで押し殺していた想いが溢れ出るかのように・・。
「だから諒。お前はもう沙都に後ろめたさを感じながら生きていくのはやめろ」