胸いっぱいGYU

言われてどきっとした。

会っていない時期がかなりあったのに・・久住さんはオレのことを見透かしている・・・。


「あと・・沙都のためにありがとう・・諒」


久住さんのひと言にまた涙した。

手に持っていたグラスに涙が落ちる。


あのころ、香奈に従うしかなかった・・・。

オレの手で沙都を守ってやることができずに・・傷つけた。

今はどうしているだろう・・。

笑って過ごしていけてるだろうか・・。

オレの好きだった太陽のような沙都の笑顔・・。

オレの天使・・。



オレの我が儘なのかもしれない・・。

沙都・・。

憎んでも恨んでもかまわない・・。

ただ・・オレのことを一瞬でも愛してくれたこと・・

どうか忘れないで・・。











次の日、腫れぼったい目をこすりながら朝一番の飛行機で日本を離れた。


久住さんと話せてよかった・・。

オレは心底からそう思った。



飛行機の中でスケッチをした。

オレの記憶に鮮明に残る太陽のような沙都の笑顔を・・。






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