胸いっぱいGYU
「・・うん、よく描けてるな・・。お前らしい絵だな・・」

諒が腰を少し落として私の描いている絵を覗いた。

・・近い・・。

距離が・・近い・・。

こんなに近くに諒がいることが久しぶりすぎて・・どうしていいかわからない・・。

「よし、この調子でがんばれよ」

諒はそう言い残して次の生徒のところへ行ってしまった。


・・・内心・・複雑だった。

行ってくれてホッとした気持ちと、教師として私に接する諒に・・淋しさを感じた気持ち・・。

教師として生徒の私に接するのは当たり前。


それが、こんなに淋しいことだなんて・・。


私はこの後の時間、あれほど描きたかった絵がまったく描けなくなってしまった。












ホント・・今日1日何してたんだろ・・ってくらい集中できない1日だった。

あの1時間目以降ずっとあのままの調子。

なにやっても身が入らない・・。


「沙都ーー」

教室の少し離れた席からあすかが私を呼んだ。








< 68 / 173 >

この作品をシェア

pagetop