泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「ああ、悪い。……行くぞ」
「はい」
「奈々絵、どうしたの?」
「……」
立ち上がった俺が純恋と同時にキッチンルームの中に入ると、するとそこには、めぐを見ているのに、何も喋らない奈々がいた。
「潤、これは?」
「あ、あづ、おはよ。
……それがさ、俺もよくわかんなくて。どうやら奈々が朝うなされてたらしいんだけど、それが収まってから、人形みたいにすげー静かになってんの」
俺が小声で言うと、潤は肩を落としてそう言い放った。
『ふーん、なるほどね。ななえーっ!!!』
俺は奈々に近づき、奴の耳元で、此処一番の大声を出した。
「うっさいわあづ!!」「……」
潤は俺の声に勢い良く抗議したが、一方の奈々は、目尻を下げて、何処か悲しそうに俺を見るだけだった。
——ごめん。
俺は、奈々絵にそう口パクで謝った。