泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。


 俺は恵美にその気持ちを悟られないよう、
小声で聞く。


「純恋は?」


 恵美は、俺の声に食い気味に返事をした。


「聞こえてるよ。あたしが奈々呼びに来たの、心配だったからはもちろんだけど、そのことも含めてだからね」




 俺の顔を覗き込みながらそう答える恵美を見ながら、ゆっくりと頷く。



「そっか、そうだよな……」





 顔を俯かせて、まるで独り言のように呟く。




 ——聞こえて当たり前だ。





 そもそも、あんな大声出したのに、隣の部屋にいたこいつらに聞こえない方が可笑しいんだ。






「工場って部屋たくさんあるけど、その分壁伝いでも声めっちゃ聞こえるから、こういう時困るんだよねー」



 恵美は頬に手を当てて、そうため息をついた。



「……そんなフォローしなくていい。俺が潤に大声出させたのが悪いんだから」



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