泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
正直、俺には死んだ家族の中でも両親の記憶が、ほとんどない。
唯一覚えてるのは、傷だらけの家族から
充満してた噎せ返るような血の匂い。
それだけは、鮮明に思い出せる。
そんなもの、忘れてしまえたらいいのに。
「大丈夫だよ奈々、
きっといつか、笑えるから。
みんなで、一緒に生きよう」
耳元で、愛しい君の声が聞こえた。
俺はその言葉を確かめるように、彼女の背中にそっと腕を回した。
永遠に続く幸せな未来なんて作るのは到底無理な話だから。
だから。
だったらせめて、天国にいる家族が
笑ってくれるようなそんな未来を作りたい。
——それでいいだろ?
いいんだよね、姉さん。
俺は生きても。
生きてみたいんだ、この世界で。
80人全員が、幸せな世界を作りたい。
その80人目に、どうか俺も、
含まれててほしいんだ。
……たったの数ヶ月だけでもいいから。