泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。







 正直、俺には死んだ家族の中でも両親の記憶が、ほとんどない。






 唯一覚えてるのは、傷だらけの家族から
充満してた噎せ返るような血の匂い。





それだけは、鮮明に思い出せる。





そんなもの、忘れてしまえたらいいのに。






「大丈夫だよ奈々、
きっといつか、笑えるから。
 みんなで、一緒に生きよう」




 耳元で、愛しい君の声が聞こえた。




 俺はその言葉を確かめるように、彼女の背中にそっと腕を回した。





 永遠に続く幸せな未来なんて作るのは到底無理な話だから。




だから。




 だったらせめて、天国にいる家族が
笑ってくれるようなそんな未来を作りたい。






 ——それでいいだろ?




いいんだよね、姉さん。





 俺は生きても。






 生きてみたいんだ、この世界で。






80人全員が、幸せな世界を作りたい。





その80人目に、どうか俺も、







含まれててほしいんだ。





……たったの数ヶ月だけでもいいから。



< 178 / 284 >

この作品をシェア

pagetop