泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「奈々。
未来、ちゃんと掴みに行こ。
あたしの旦那になるんでしょ?」
恵美はそう言って、俺の手を取った。
彼女は指を絡ませて、俺と恋人繋ぎをした。
「俺といたって、絶対幸せになれねぇよ?」
俺は恵美に、お手上げだと言わんばかりの視線を向けた。
「え?奈々が隣ににいるなら、あたしはどんな状況でも、幸せだって断言出来るよ?」
「!」
心臓がやけにうるさかった。
俺は気がつけば、彼女の手を離して幹部室のドアを開け、廊下奥にあるエレベーターへ向かって、只只走っていた。
病気悪化するのわかってるくせに、何してんだろ。
俺、照れてんのかな。
あの場にいたくなかった。
いたら、また泣き出してしまいそうだったから。
恵美は本当に、俺の心を慰めたりすることに関しては、天才なのかもしれない。
もしかしたら恵美といたら、俺は本当に家族とのあの記憶を忘れられるかもしれない。
そんな希望を抱いたのは、内緒。