泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
あづはそういい、俺に片手を差し伸べた。
“奈ー々絵!”
ふと頭に、大好きだった姉さんの声がよぎった。
この手を取ったら、俺は自分の名前を
呼ばれるのが、嫌じゃなくなるのだろうか……。
呼ばれるたびに、親を、姉を、
家族を。
あいつらは死んだのに自分はのうのうと
生きている事実を、
思い出さないで済むのか?
そう思って
俺が恐る恐る顔を上げると、
あづはしょうがないなぁとでも
言いたげに、
今までで一番晴れやかな顔で、俺に笑いかけた。