泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
……なんて、嘘だ。いいわけない。……嫌だ。もうすぐ死ぬなんて。
恵美、俺はお前が生きる年月の半分どころか、あと数か月で死ぬ運命だ。子供欲しいとか、幸せになりたいとか、どんなにそう願っても、俺の望みは全て手の平から零れ落ちる。
それでも、決めたんだ。
……それでも、俺は最後の時まで、あづのそばにいるって。死ぬまであづを支えるって。
あづはそんな俺に、十分すぎる役割を与えてくれた。……病弱な奴が副総長になんて、本当は絶対になっちゃいけないのに。
本当に、あづには感謝してもしきれない。自殺を止めてくれたことも、副総長にしてくれたことも。
あづのことは何が何でも助ける。救ってやるさ、必ず。
そのための手筈は、もう整っている。
――プルル、ルル!!
直後、フランスで主治医をしてくれていたアビラン先生から、電話がかかってきた。
「……はい」
《元気かい、赤羽くん》
「……はい。すごい元気だって言ったら、嘘になりますけど」
《そうか》
「……あづも、元気ですよ。俺が見た限りは。俺、今日あいつにサプライズされたんですよ。笑っちゃいますよね。母親に虐待されてて、人を構う暇なんて無いはずなのに。それなのにいつだってアイツは、他人のことばっか考えてる」
《……誰に似たんだろうな》
「決まっているでしょう。貴方と穂稀先生に似たんですよ。早く会いに来てやってくださいよ。先生が日本に来さえすれば、全て解決するんですから」
――アビラン先生は、あづの父親だ。先生はあづと同じ青い髪に、ほんの少しつり上がった瞳をしていて、小さい赤ん坊の頃のあづが映った写真も持っている。
……正真正銘、あづの父親なんだ。
アビラン先生が日本に帰って、穂稀先生を説得してくれさえすれば、きっと虐待は解決する。
……絶対とは言いきれないけれど。
そうなれば、あづは俺が居なくなったあとも笑って生きていけるはずなんだ。
《赤羽くん、僕は……》
「帰る気がないなんて、言いませんよね? そんなこと言ったら、俺は死んでも先生を許しませんよ」
《……ああ、わかってる。帰るときに、また連絡するよ》
「……はい」