泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「……奈々、今、誰と話してた?」
俺は慌てて電話を切り、後ろに振り向く。
「あづ。どうした?」
「……恵美が、奈々のこと探してて。それで、俺、もしかしたら屋上かと思って。……奈々、誰かと電話してたから、電話終わったら声かけるつもりだったんだけど、でも、俺と会わせるっていってたから、気になって。俺と、誰を会わせるつもりなんだよ」
低い声で、怯えるように震えながら、あづは呟く。
「……お前の本当の父親だよ」
「……いい。俺、そんなの望んでない」
「いや、望んでるだろ。……会いたいだろ!」
「会いたくなんかねえ!!」
首を振って、あづは叫んだ。
「……顔も知らない親に、会いたいなんて思わねえ。何十年もほったらかしにされて。電話もメールも、手紙もくれなかった奴に、今更会いたいなんて思わねえ」
「じゃあお前は、顔も知らない父親と穂稀先生と一緒に三人で暮らすよりも、このまま穂稀先生と二人で暮らすのを望むのか」
「……うるせえ!!」
そういい、あづは走って屋上を出た。