泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「そうですか。では、明日の昼頃までには赤羽くんの
専門医の方がいらっしゃいますので、そこで容態をお話しましょう。今日はもう遅いので、お引き取り下さい」
奈々の専門医ってことは、……父さんが来るのか?
マジか……。
「今すぐには、お話できないんですか」
めぐが母さんに畳み掛ける。
「恐縮ですが、それは出来ません。もう閉店時間を過ぎていますし」
「……分かりました」
「空我、
あなたも、早く帰りなさい」
めぐの隣にいた俺を見つめ、母さんは言った。
「あぁ。母さん、電話に出てくれて、
奈々を治療してくれてありがとう」
俺は母さんに近づいて、精一杯の感謝を込めて言った。
「何言ってるの。
医者としての勘が働いただけよ」
母さんはまたもや目を見開いたあと
すぐに冷たい眼差しをし、言った。
「あぁ、わかってる。けど、
言っておきたかったんだ。
また明日な。ほら、帰るぞめぐ」
そういい、俺は泣いているめぐの腕を引いて、
病院を後にした。