泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「……あづは平気なの?」
病院の出入口を出たところで、
めぐは俺の腕を振り払って聞いてきた。
「…………」
俺は何も言わず、後ろに振り向いて病院の7階を見やった。
集中治療室は、長谷川総合病院
の7階の端にある部屋だった。
そこには未だにしっかりと明かりがついていて、
奈々の身体は、全くもって
無事ではないことを俺は実感させられる。
「平気にしないと、いけねーだろ」
かぼそく呟く。
本当は平気なわけがなかった。
けど、あいつは俺を助けるために
こんなことになったんだ。
それなら、俺はたとえ何があっても、虹欄の奴らと笑って生きていくしかないだろう。
だって、恩返しなんて、クソッタレの俺には、そんなありきたりなことしかできないんだから……。