泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
思わず俺は病室のドアに手をかけ、
走って逃げ出そうとする。
「「空我!」」
潤が俺の腕を掴んで、奈々も精一杯の声を上げて、阻止した。
——こんなことをしている場合
ではない。
早く奈々の容態聞いて、虹欄の奴らも
みんな安心させねぇと……。
そんなことは自分が一番よく分かっていた。
それでも、俺は潤と奈々絵を
見つめ、そう縋るように言った。
「頼むから、今だけは見逃してくれ……」
「なぁ、空我。
お前、本当は…………」
不意に、潤が腕の力を緩めた。
“父親が現れるのをずっと望んで
たんじゃないのか”と。
潤が一度そう言おうとして、言葉を紡いだのがわかった。
俺はもうその場にいるのが限界だった。
潤の腕を振り払って、俺は
全力で逃げ出した。