泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。




 好きだったんだ、ずっとずっと。




求めていたんだ、ずっとずっと。




母親も、父親も。





 そいつらから向けられる、愛そのものを。





 ——10年だ。




10年、何も言わず母親と健気に連絡とって
仲良く生きてきましたって?






 自分は実の子供なんか目もくれず、必死に
他の子供の病気治してましたって?




「なんでだよ……………」






 男が気絶したのに気づいて咄嗟に
我に帰り、俺は涙した。





 まだ喧嘩をしている群れを探しながら、
願う。








 ……なぁ、頼むから嘘だって言ってくれよ。






 自分は、たかが他人にも勝てやしないのか。





 何でだ。




それが、病人だったり




ましてや、無愛想過ぎるフランスにいた頃の奈々のように、手のかかる奴だからか。







 人は癖のある奴を好むからか。





 仕事だからか。





 ——それなら自分は、たかが仕事に負けたのか?






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