泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「潤さん、大丈夫です。
今からでも充分間に合います。
——総長を、連れ戻しに行きましょう」
お互いに背中を預け戦っていたその時、桜桃が俺にしか聞こえないのではないかと錯覚してしまう程とても小さな声で、そう言ってきた。
しかしそれは、俺を冷静にするには十分すぎた。
「あぁ、そうだな」
10年一緒にいた。
けど、あいつの支えになることは
俺に少しでも出来たんだろうか。
あいつが俺に自分の境遇を初めて話してくれたのは、ほんの1ヶ月も前だ。
それでも、あいつがココ最近毎日のように
俺に向けてくれた笑顔を。
あの一番に俺に頼ってきてくれる
時の顔を、
俺は、忘れたくないんだ。
そん時の奴の顔が、空我自身が、俺は好きで好きで仕方が無いんだ。
たとえ自分に、あいつを救う資格などないとしても、
……俺は、絶対にあいつを救ってみせる。
——約束したんだよ、逃げないって。
お前のことは、絶対に俺が救うって。
——なぁ、いいだろ?
独占欲が疼く。
俺以外に救われるなんて、絶対に許さない。
イヤホンから奈々の声が聞こえる。俺はその声に耳を傾けながら、ありとあらゆる神経を集中させて、
あづの手がかりを探し続けた。