泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。




 ふと、無意識に自分が俺達と考えていた
ことに気づいて、少しだけ辛くなった。



「ちっ………….」

 思わず舌打ちをして、俺は顔を俯かせた。




虹欄の世界で泣き虫と言われていた
もう一人の青年であり、
そして、……俺のもう一人の親友であった奈々絵は、
もうすでにこの世にはいなかった。






 俺らが病院に戻った翌日、つまりは、奈々が自分の容態を俺達に伝えてきた日。



 あの日のことは、今も鮮明に覚えている。




 その日、奈々絵は俺達に嘘をついたんだ。




 ――何ともないよって。



 そして、それから一週間が経ったある日、奈々絵は死んだ。――俺達を置いて、消えてしまった。



< 274 / 284 >

この作品をシェア

pagetop