泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
パソコンの画面に表示されていたのは、
俺達の最寄りから2駅先の場所にある
15階建ての病院だった。
「そこにあづの母親が働いている」
——へ?
奈々はまた平然と言い放った。
「ちょっと待ちなさいよ奈々。
だからって何であづはここにいるのよ?」
めぐはテーブルに置かれていたノンアルコールの缶酎ハイを少しだけ口に含んだ後、どういうこと?とでも言いたげな顔をして、首をかしげた。
いや、その前に俺はあいつが医者の息子なのがもうビックリなんだが……。
「あ? だってあいつが逃げる場所なんて、せいぜい喧嘩できるとこか自分の家しかないだろ。だからまぁ、母親が働いてる場所が一番いそうかと」
「……自分の家じゃなくてか?」
「……家だと俺達にいるのがすぐバレるからな。母親が働いてるとこだと考えるのが、いちばん無難だろ」