泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。


 
 今から十か月前の一月、俺はついにそんな母親から愛想を尽かされ、家を追い出された。自分がいいって言うまで帰ってこないでって言われたんだ。

 ……それまでは追い出しても必ず夜中だけは家に入れてくれたり、何ヶ月かに1回は金を渡してくれたりしたのに今回は無一文で半年以上ほっとかれた。

そうなったのは多分、受験で志望校に落ちて、滑りどめに合格してしまったからだ。


きっとそれが母親の期限を損ねた一番の原因だ。


 まあそもそもこんな酷い環境で勉強なんてできるわけないのだが、そういったらいわけだって言われて強制的に追い出されてしまった。


 そのことが原因で俺はなにもかもがどうでもよくなってしまい、喧嘩をしたり金をたかったりするようになった。



 そういうことをしてれば、母親の恐怖心や自分が母親に少しばかり期待してたことを忘れられたから。


 俺はその喧嘩でできた友達とともに、暴力団を作った。亜月空我からとって、亜空(あそ)という名の。

 俺はその暴力団のメンバーと一緒に喧嘩をしまくる傍らで、怜央と金をたかったり、いじめなんかをして遊んだ。

 いつかそんな悪いことをしまくっていたら、母親が俺を気にしてくれるようになるのではないかと思って。

 でもそんなことにはならなかった。



 ……愛なんて、美しいもんは手に入らなかった。


 いや、俺には生まれた時から、そんな大層なものを手にする資格すらなかったんだ。


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