泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
「あづ!!」
潤が俺の腕を掴んで、声がかれる勢いで叫ぶ。
俺は潤の腕を思いっきり振りほどいた。本気で心配されたのが、逆に気に障った。なんも知らないくせに無神経に止められたのが、どうしようもなく腹が立った。
「……うるせぇ」
俺はそういうと、怜央の腕を掴んで走った。
「おいあづ!!」
俺は後ろから聞こえてくる潤の焦った声を無視して、ただひたすら走った。
「はぁ……っ。ごめん怜央、いきなり走って」
五分くらい走ったところで足を止めて、俺は怜央に頭を下げる。
「いや全然いいけど、何もあんな必死で逃げなくてもよかったんじゃないか? たかんのなんて今日じゃなくてもできるし」
「……今日できないと困るんだよ」
いつまたトイレや物置に閉じ込められるかわかんないし、食料確保するための金は多めに用意しなきゃだから。
「え?」
「あー、なんでもない。今の忘れて」
「……いやなんでもなくないだろ!何かあったのか?」
首を傾げて、心配そうに怜央は言う。
「……なんもねぇよ。行こうぜ」
「ああ」
怜央が頷いたのを確認すると、俺は作り笑いを怜央に向けてから、また金をたかりに向かった。