泣き跡に一輪の花Ⅰ~Love or Friends~。
直後、めぐは突然立ち上がると、目の前にいる奈々を勢いよく抱きしめた。
「恵美?」
「……頑張ったね、奈々。
ずっとずっと、辛かったでしょ?」
めぐは両目にたくさんの涙を溜めて、絞り出すように言った。
「……辛いとか、そんな類のものじゃなかった。
いつもいつも、身体中痛くて、両親と家族で一番仲良かった姉ちゃんが事故で死ぬ夢ばっか見てた」
「うん、うん」
奈々が淡々と口にするのを見ながら、めぐは何度も何度も頷いた。
……屋上から落ちて目を覚ました頃の奈々は、荒れに荒れていた。
それはもう、助けた俺に殺してくれって頼んでくるような勢いで。
奴の瞳は、恐ろしいほどに真っ黒に染まっていた。