友 ~雲外に蒼天あり~
僕は、壬生寺に子供達と遊ぼうと向かっていた

「うわぁーーーーーーん!!」


凄まじい泣き声

これは、太一の声だ



寺に走って行くと

可愛らしい娘さんにしがみつき
泣いている太一


近くにいるお里に問う


「太一、どうしたの?」


「竹とんぼとろうとしたの」


木から落ちたのだとわかった


「太一!?痛いとこない?」


「怖かったぁーーー!」



怪我はなさそうですね



「あなたは?」



太一にしがみつかれたまま
無表情な娘さんの顔を覗く


「大丈夫?」



「お姉さんが助けてくれたの!」


娘さんの代わりに
お里が元気よく教えてくれた


「お怪我ありませんか?」


コクリと頷いた


少し困惑しているように見えた


「太一!お姉さんが困ってるよ!
さあ!泣きやんで御礼を言わなきゃね!」


太一がムクリと娘さんから離れた



「ありがとう」



「はい!お利口さんですね!
今日は、お里と一緒に帰って大人しくね!」



「「またね」」




2人が帰って行く




地べたに座ったままの娘さんに
手を差し伸べる


「立てますか?」


娘さんは、僕の手を握らず
サッと立ち

パタパタと着物を叩いた


「助けてくれてありがとう!
怪我は、なさそうですね」


なんていうか…


先ほどから僕が顔を覗いても


目が合わない




あ! 人見知り!




「これ、僕が作ったんです!
御礼にどうぞ!」




子供達と遊ぼうと持ってきた
竹とんぼの新作を娘さんに差し出した




恐る恐る伸びて来た手が


竹とんぼを持つ




「…ありがとう」









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