友 ~雲外に蒼天あり~
屯所までの道のり

倖は、何も話そうとしなかった


屯所の門前に到着すると


「余所余所しくするには、どうしたらいい?
勇と呼んではならんのだろう?」


「構わないさ」


「勇は、構わなくてもコイツは
年上には、駄目だと言った
それに、女中とは下働きだ
局長を名呼びして、怪しまれないか?」


黙っていたのは、考えてたからか…


しかも、土方さんをコイツって…


「僕みたいに近藤さん!土方さんって
さんをつけて呼ぶといいよ!
それと、余所余所しくしなくても大丈夫!
近藤さんの縁者だと言えば良いことだから」


「他にも女中さんが2人通いでくるから
2人とも気さくで馴染みやすい
仲良くしてくれ」


「愛想笑いというものを最近覚えた
仲良くする」


僕達は、倖の質問に答えた

倖は、本当に世を知らないみたい




「勇…」


もう一度、引き止めた



「こういう仕事は、したことがない
迷惑を掛け、勇の邪魔になりたくない
勇が、判断してくれ
不向きだと感じたら…
捨ててくれて構わないから」


近藤さんは、倖の頬を撫でた



「不安かい?」


「当たり前だ」


「表情には、出ないんだね?
倖、熱がある今夜は働かず休んでくれ」

「なんで?」

「熱があるんだ休まないと」

「どうして熱があると休むのだ?
私は、動けるぞ?」

「無理をさせたくないから、休むように!」

「私は、勇の為に働く
これくらいの熱で休めない!」


しばらくこのやり取りが続き



「おい!近藤さんが休めと命を出している!
何でもするんじゃなかったのか?」


倖は、近藤さんをパッと見ると


「命令だったのか!!」



驚いていた




「そう!近藤さんが働く為に
今夜は、大人しくしろってよ!いいか!」


「わかった!」





屯所に入ると

会う人にペコリ


「倖だ!私の縁者で住み込み女中だ!」


「よろしくお願い致します」


にこっと例の愛想笑いをすると

幹部以外の者は、本当の笑顔と思い

倖の魅力に顔を赤らめたりしてた



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