友 ~雲外に蒼天あり~
「おいで!」


娘さんの手を引き

井戸へ




皆も井戸に集まってきた



「まさか?わざと捕まったの?」




先日、皆で追いかけてもダメだった

なのに、あっさりと捕まえられるなんて




「私は、友が何か知らない
だが…お前には、また会いたいと思った」




驚くほど冷たい声色

でも、嬉しい言葉




「それが友なんですよ!」



にこりと微笑み

井戸水で手拭いを濡らした



「すまねえ…」


娘さんへ土方さんが頭を下げた


「なぜ謝る?私ならもっと酷い拷問をした
疑わしい者に対する拷問は、当然だ」


「…お前何者なんだ?」


「僕の友だと言ったでしょ!?」


「敵かもしれねぇだろ!!」


「敵じゃありません!!!
僕も太一も助けてもらったんです!!」



土方さんと言い合いをしていると



「そいつの言うことは正しい
敵かもしれないという疑いは、持つべきだ
友が何か知らないが
人は、裏切る  いらなくなれば捨てる
そういうものだろう」


「君もそうだというの?」


「違うとは言えぬ
だが… お前は、違うだろうと思った
なぜだろうな…」



「友だからですよ!
総司って、呼んで下さい!
あなたの名前も教えて下さいませんか?」



無表情だった娘さんが
ものすごく悲しい顔をして



「倖」


「コウですね!!」


「誰もそうは呼ばないけどな」




コウは、素早く塀を飛び越え

すっかり暗くなった


町の方へ消えた




結局、手当て出来ず

僕の手から手拭いを伝って水が落ちていく





その後






土方さんに大説教を貰い、おまけに拳骨


皆にコウとの出会いから


今日までのことを話した























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