もう一度、あなたに恋していいですか
それから何事もなかったかのように、圭介さんと会い続けた。
三枝さんとは挨拶する程度になっていて、深く干渉してくることがなくなった。

圭介さんとは会社ではいつも通りの上司と部下。
会社を出ると男と女。
会うと何度も抱かれて、気持ちよさに鳴かされる。

表面的にはなにも変わらない。
でもひとつだけ変わっているものがあった。
私の圭介さんへの気持ちに迷いが生じ始めていた。

けれどこの関係を壊すことが怖くてしかたがない。
なにも聞けずに、気づけば2ヶ月が経っていた。



「お疲れ様」

私は仕事終わりに訪れた圭介さんの鞄を受けとり、部屋に招き入れる。

「未羽もお疲れ様」

そう言って彼は私の額にキスをする。

「今日はカレー作ったよ。すぐ食べるよね?」

「うん、ありがとう」

彼が脱いだ上着を受けとりハンガーにかけようとしたとき、ポケットから名刺いれが床に落ちる。

「あ…」

中身も零れ落ち拾おうとすると、名刺ではないものが混ざっていることに気づく。
手に取るとそれは写真だった。

圭介さんの、奥さん…

写真には圭介さんと奥さんらしき人と子供が写っていた。
彼は私の見たことがない顔で笑っていた。

幸せそうな家庭。
不倫相手がいるって知ったら、どんな顔をするだろう。
私はこの笑顔を、壊そうとしていたの?

急に私は三枝さんのことを思い出した。
このままじゃだめだ。
たとえ、これで終わってしまっても。
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