もう一度、あなたに恋していいですか
「…圭介さん!」
俺は背中を向けたまま立ち止まる。
「あのとき…何で私にキスしたんですか」
二人きりの部署で、彼女にキスをした。
あのときから俺たちの関係は始まった。
それよりも前から…内定式の飲み会の夜から、俺は彼女の笑顔が忘れられなくて。
再び彼女の笑顔を見た瞬間、思わず心を奪われた。
そんなこと家族を裏切り、彼女をたくさん傷つけた俺が言う資格があるのだろうか。
「…秘密」
君は知らなくていい。
俺が君を好きなったきっかけなんて知らなくていい。
知ったって、今後の人生に必要ないんだから。
そう言って俺は最後の力を振り絞り笑った。
きちんと笑えていたかな。
「…そっか。ありがとう」
それからすぐに俺は彼女の部屋をあとにした。
そしてすぐにエレベーターに飛び乗る。
未羽。
愛してたよ。
本当に愛してた。
こんなこと俺に言う資格なんてないけれど、最後にもう一度だけ言わせてくれ。
「あいしてる…未羽」
この関係を終わりにするきっかけを与えてくれてありがとう。
もう俺みたいな奴に引っ掛かるなよ。
絶対幸せになってくれ。
未羽の気持ちを無駄にしない。
もう妻や娘を裏切らないと約束する。
大切にするから…。
俺は家に向かって走る。
そして家に着くと、玄関の扉を勢いよく開いた。