秋恋祭り (あきこいまつり)
 その日は地区の秋祭りの打ち合わせに、夕方公民館へと向かった。


 俺はこの祭りは三度目の参加となる。
 大三国の火の子の下をきおう盛り上がりが好きで、三年に一度のこの祭りを心待ちにしていた。

 公民館に着くともすでに参加者は集まっていて、俺は幼馴染で同じ歳の桐山仁志(きりやまひとし)の隣に腰を下ろした。


 祭りの役員が前に並び出した時、二人組の女の子達が入ってくるのが見えた。

 俺達、煙火部の楽しみの一つでもあるのが、女の子達との祭りを盛り上げる事だ。
 彼女達は俺の前に座った。

 仁志が肘を突く。
 仁志の目が今年はどの子にする? と言っている。

 毎回、好みの女の子を決めて楽しむが、勿論それは祭りの盛り上がりの一環で、それ以上は進展もないし祭りが終われば忘れてしまうものだ。


 役員達の挨拶やら日程説明が終わると、テーブルの上に安いオードブルと缶ビールが配られた。

 乾杯の音頭と共にアルコールが入れば、すぐに会場は宴会の雰囲気へと変わった。


 俺は目の前に座った彼女に声を掛けた。


「俺、高野沢雅巳。君名前は?」


「笹原美夜です」


「若いけど祭り初めて?」


「はい。始めてです」


「じゃあ、よろしく。美夜ちゃん」俺はビールの缶を軽く上げた。


 彼女は慌てて、缶ビールを上げカチンと缶を交わした。

 慣れない場に緊張した顔でほほ笑む姿が可愛かった。
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