秋恋祭り (あきこいまつり)
 車に乗った美夜は、やはり緊張しいて固まっている。


「そんなに固くならなくても…… すぐ着くから……」

「あの……」

「どうした?」

「私なんかが助手席に乗ったら、彼女さんに悪いんじゃ……」

「……」


 俺の胸に大きな衝撃が走り言葉が出なかった。

 俺は美夜の小さな不安がいじらしくて、言わなければならない言葉を飲み込んでしまった。


「大丈夫だよ……」


 俺はやっとの思いで口にすると、緊張している美夜の頭を優しく撫でた。


 自分でもわかっていた。逃げ言葉だって事くらい…… 


「美夜ちゃん彼氏は?」

「そんなのいないですよ…… 私、もてないんですよね……」

 嘘だろ? これだけ男達が言い寄っているのに気付いてないのかよ?


 この子はどんな恋を求めているのだろう? ふと、そんな事が頭を過った。
 そんな想いが、美夜を見る目を熱くしてしまったのだろう……

 俺は美也のまだ若い唇を奪おうと顔を近づけたが、純粋な瞳を向けら気持ちにブレーキをかけた。

 勿論、祭りで知り合った子に、キスしようなんて思った事は無い。
 こんな気持ちになったのは初めてだ……

 わずか数分のドライブを、俺は忘れる事が出来なくなってしまった……
< 17 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop