秋恋祭り (あきこいまつり)
 雅巳が側に居てくれる事の大きさを知ったのは、神社から大三国をトラックに積み、地区の中を披露して回る時だった。

 トラックの荷台に、大三国の筒と一緒に皆乗り込んだ。私もトラックの荷台に乗せられた。

 パラパラ降る雨が体を冷やす。

 一升瓶が回りラッパ飲みで体を温める。雅巳は私から片時も離れなかった…… 

 回ってきた一升瓶を雅巳が先に飲んで私に渡す。
 私が飲むと又雅巳が飲んで次の人に回す。
 それが繰り返される。


「関節キスは、俺だけね」

 私の頬は、お酒のせいだけでなく赤くなった。


 酒の勢いは益し、男達は勢いで女の子達の肩を抱いては笛を鳴らす。

 私の周りにも酔った男達が近づくが、雅巳の存在に遠のいて行く……

 神社にトラックが戻ると、皆トラックからフラフラと飛び降りる……
 
 私も飛び降りようとしが、酔いが回りあまりの高さに躊躇した。


「美夜!」


 その声の先を見ると、雅巳の腕が大きく開きトラックの下で待っていた。

 私は、迷わずその胸に飛び降りた。

 強く抱きしめられた胸は苦しく高鳴った。


 私は雅巳が好きだ……

 本気で好きだ……


 ふと、顔を上げると雅巳の目と重なった。

 しかし、雅巳の目は私から離れてしまった。


 胸の奥に、いいようのない不安が落ちた。


 私は、祭りが終わっても消えない気持ちに気付いてしまったから……
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