秋恋祭り　（あきこいまつり）
　祭りの境内に三国が設置された。
　観客の中の人影に俺は現実に戻された。今はそこへ行かなければならなかった。


　祭りの法被の群れの中に戻ると、美夜がおれを探しているのが分かった。


「どこに行ってたの？」


　美夜の不安そうな声に胸が締め付けられる。

　隣に居た仁志が言おうとした葉を俺は遮った。


「美夜、ごめーん」

　俺は足元から美夜を抱き上げた。

　思った以上に軽く彼女は高く持ち上がり、空に上がった花火と共に俺は興奮した。

　今だけは美夜を俺だけの者に……

　もう少しだけ……　美夜を好きでいさせくれ……


　俺は美夜を下ろすと法被を脱ぎ、腹掛けになった腕で美夜の肩を抱いた。

　俺の腕に美也の頬が触れる。

　愛しさが込み上げてくる……


　一気に祭は勢いを見せ、仕掛け花火が辺りに明るい光りを指し観客から歓声が上がる。

　大三国に点火され火の子が噴き上げる中を美夜の肩を抱いて飛び込んだ。


　熱い火の子が肩に落ちる度、『すき』だと何度も心で叫んだ。

　美夜の顔を見ると、何か言いた気な潤んだ目に俺は『言うな』と強く願った。


　火の子に混じり俺の目から涙が一粒落ちた……

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