秋恋祭り （あきこいまつり）

秋恋祭りの恋の風 ～美夜～

三年後……
　秋祭りの季節が来た。


　
『雅巳さんの奥さん、看護師さんだからさ……』

　あの祭りの後、美由紀との会話の中でさらっと口に出された言葉。
　その後なんて言ったのかなどを覚えていない。
　そんな事は当たり前のように会話は流れて行った。

　祭の後、雅巳が消えてしまった理由がそうであるなら、私の気持ちに気付いていたのだろうか？　

　これ以上は厄介になると思い消えたのだろうか？


　そんな雅巳への想いから前に進まなければと、私は、職場の飲み会で知り合った下請け会社の男性と付き合った。
　しかし、仕事は休みがち暇さえあればパチンコへ行く彼にうんざりしていた。
　別れを切り出せば泣き付かれ、ずるずると関係が続いてたい。

　これも、自分の弱さだと解っていた。

　こんなのは恋でもなんでもない事も…


　もう一度、秋祭りの参加申し込みをしたのも、祭りの勢いに何か変わるのではと思ったからだ。

　
　そして、雅巳の姿をもう一度見たかった。


　あの祭りから、雅巳が私の事務所を訪れる事は無かった。