秋恋祭り （あきこいまつり）

　幼馴染の美由紀(みゆき)に誘われ、今年は三年に一度の年番である神社のお祭りに参加する事になっていた。

　美由紀は美人だし大人びているから、祭りでも上手くやれるだろうが、私は苦手な大勢の男性の中で不安だった。　

　私は美由紀と一緒に、祭りの説明会場へと入った。

　もうすでに人は集まっていて、役員の挨拶が始まる直前だった。
　取りあえず空いている場所を見つけて座った。


　祭りの役員の挨拶、日程説明が終わるとテーブルの上に安いオードブルと缶ビールが並べられた……
　乾杯の音頭とともに、会場は宴会ムードに変わる。

　私はこの雰囲気が苦手だ……　

　誰と何を話していいかわからない……　
　どちらかと言うと若い男の人より、おじいちゃん達と話している方が気楽だ……　
　しかし、私の周りの席には若い男の人ばかりだ……　


　心配していた通り、目の前に座っていた男性が声を掛けてきた、一目でカッコよくてもてそうなのが分かる。

　こういう人は苦手だ……


「俺、高野沢雅巳(たかのさわまさみ)。君名前は？」

「笹原(ささはら)美夜(みや)です」

「若いけど、祭り初めて？」

「はい」

「じゃあ、よろしく、美夜ちゃん」


　雅巳は缶ビールを軽く私の前に差し出した。慌てて私は缶ビールを持ち上げカチンと缶を合わせた。


　直ぐに名前で呼ぶあたりが、女なれしていてバカにされている気分になった。


　雅巳は立ち上がり、他の席へと移って行った。

　私はほっとしたのと同時に、やっぱり私じゃつまらないんだな……　
　
　ちょっとだけ寂しくなった。