秋恋祭り (あきこいまつり)
「ねえ美夜。せっかくの祭りなんだから楽しもうよ。どうせ、男の人達だって、祭りの盛り上げに声掛けているだけなんだからさ。気楽に行こうよ。祭りが終われば会う事も無いんだからさ……」

 美由紀が私の緊張を解すように言ってくれた。


「そうだね……」

 私は肯き、ただの祭り…… と言い聞かせた。


 それにしても、次から次へと男の人達がやってくる。

 祭りの盛り上げとだと思うと変に気を使う事も無くなり、緊張も和らいでおしゃべりも楽になってきた。

 しかし……


 雅巳が戻ってきて私の横にぴったりと座った。


 又、緊張が戻ってくる。何故だろう? 

 この人嫌だ……


「美夜ちゃんいくつ?」

「二十歳です」

「高野沢さんはおいくつなんですか?」

 隣に座る美由紀が聞いた。

「二十七!」

「わー、大人ですね」


 美由紀の言った大人と言う意味をそれほど深く考えて居なかった。

 大人と言われた雅巳が何を背負っているのなんて予想もできなかった。


 私はまだ幼すぎたんだ……


「美夜ちゃん、仕事は何しているの?」

「インテリア事務所で事務をやっています」

「あっ、俺今日行ったかも?」


 私は雅巳と目を合わせた瞬間思いだした。はっきりとした深い目……


「今日、お見えになりましたよね。スーツだったから分からなかった……」

 仕事の取引先の人か…… あんまり失礼な態度もとれないな……


 そんな程度の印象しかなかったのに……
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