秋恋祭り (あきこいまつり)
 作業も終わり、少し外の空気を吸いたくなった私は一人で作業場の外へ出た。

 暗い夜にしとしとと降る雨が綺麗で、思わず雨を見上げた。

 何だか、雨の雫か気持ちよくて目を閉じた。頬に当たる雫が落ち着きを取り戻してくれる。

 ふと、誰かの視線を感じ私はゆっくり振り向いた。


 その先にあった雅巳の深い目と重なった。

 目が離せない…… 

 あまりにも深くて吸い込まれそうで怖い……

 長い時間が経ったような気がする…… 多分、数秒の事なのに……


「風邪引くよ……」


 私が初めて耳にする心地よい優しい声に、さっきまでの嫌悪感が消えていた。


「うん、気持ちよかった」

 
 あんなに嫌だったのに何故だろう?
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