日常に、ほんの少しの恋を添えて
「せ、専務って藤久良の、御曹司ですよね? これってもし私がご機嫌を損ねるようなことがあったら、私はどうしたらいいのでしょうか……せ、切腹でしょうか……」
おびえる私を、新見さんがポカーンと口を開けたまま見つめる。
「え? せ、切腹? いや面白いけど何言ってるの長谷川さん。専務はそんなキャラじゃないわよ。いえ、それ以前に専務は役員の中で一番温厚かもしれないわ。あなたはラッキーなのよ」
「ラッキー、ですか……」
すると新見さんが「では」と言って立ちあがった。
「専務のところに行きましょうか。新しい秘書が来ることは知ってらっしゃるから」
「……はい」
新見さんが颯爽と歩いていくその後ろを、離されないように私もやや速いペースで着いていく。
その彼女がとある役員室の前で止まった。
「ここが専務の部屋」
と言って新見さんが役員室のドアをノックした。すると奥から聞こえてきたのは、「どうぞ」と落ち着いた感じの男性の声。
「失礼いたします」
新見さんに引き続いて、私も「失礼いたします」と頭を下げ役員室に足を踏み入れた。
その人物は、私と新見さんが入って来た瞬間に立ちあがり、こちらをじっと見つめている。
「専務、こちら私の後任の長谷川志緒さんです」
「長谷川志緒と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
勢いよく頭を下げ、それから姿勢を正し私は専務に向き直った。
おびえる私を、新見さんがポカーンと口を開けたまま見つめる。
「え? せ、切腹? いや面白いけど何言ってるの長谷川さん。専務はそんなキャラじゃないわよ。いえ、それ以前に専務は役員の中で一番温厚かもしれないわ。あなたはラッキーなのよ」
「ラッキー、ですか……」
すると新見さんが「では」と言って立ちあがった。
「専務のところに行きましょうか。新しい秘書が来ることは知ってらっしゃるから」
「……はい」
新見さんが颯爽と歩いていくその後ろを、離されないように私もやや速いペースで着いていく。
その彼女がとある役員室の前で止まった。
「ここが専務の部屋」
と言って新見さんが役員室のドアをノックした。すると奥から聞こえてきたのは、「どうぞ」と落ち着いた感じの男性の声。
「失礼いたします」
新見さんに引き続いて、私も「失礼いたします」と頭を下げ役員室に足を踏み入れた。
その人物は、私と新見さんが入って来た瞬間に立ちあがり、こちらをじっと見つめている。
「専務、こちら私の後任の長谷川志緒さんです」
「長谷川志緒と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
勢いよく頭を下げ、それから姿勢を正し私は専務に向き直った。