日常に、ほんの少しの恋を添えて
「花島さんには私が伝えますよ」
「いいんだ、ちょっと話もあるし。じゃ、悪いけどよろしく。なるべく早く戻るようにはするから」
「はい……」

 連絡事項だけを私に伝え、せわしなく専務は役員室を出て行った。
 
 それから私は少しデスクワークをこなし、お弁当を受け取りに外出。
 無事に二つのハンバーグ弁当をゲットして、戻るころ会社はちょうど昼休みだ。
 私が秘書室に戻ると、待っていたかのように花島さんがつつつ……と近づく。

「長谷川さん、専務から話は伺ってます~。取りに行ってもらってありがとう、ごちそうさまです」
 
 軽く頭を下げ、花島さんがニコ、と笑う。

「いえ、私も急遽専務のおこぼれ頂いた身なので。お弁当、出来立てなのでまだ温かいですよ」
「長谷川さん。このお弁当ミーティングルームで食べない?」
「はい、いいですよ」

 花島さんの提案で、私は花島さんと二人でミーティングルームに移動する。
 すると、ここまでにこにこと笑顔を絶やさなかった花島さんの顔から笑顔が消えた。

「長谷川さん、専務が藤久良商事に行くっていう話、聞いてるわよね?」

 ――あ。専務花島さんに話したんだ……
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