日常に、ほんの少しの恋を添えて
 あと約一カ月でお別れだなんて、あっという間じゃない。
 その事実に寂しさと、動揺で頭の中がグルグルしてる。

 やっぱり、あの時告白した方が良かったのだろうか。でもお別れになるのに告白して、どうすんの? 会社が変わっても専務が会ってくれるという保証はないんだよ?
 むしろ、会社が変わったらそこに素晴らしい女性が沢山いるかもしれないし……
 自分で想像して、さらに落ち込む。
 
 専務に譲ってもらったハンバーグ弁当はとても美味しかった。けれど私の気持ちはどんよりと沈んだ。

**


 あの後、臨時の取締役会が開かれ、正式に専務の退社が決定した。

 決定してすぐに、真剣な顔をした専務に話がある、と呼び出された。その瞬間言われることが容易に想像できた。
 そして専務の口から、今回のことについての詳細が語られた。
 今年いっぱいでこの会社を退社し、藤久良商事に入社することになったと。自分はまだこの会社に居たかったが、今回の人事で会長に退くお父様の指示は絶対で、自分ではもうどうすることもできなかったと。
 
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