日常に、ほんの少しの恋を添えて
「わかりました、じゃあ、お言葉に甘えて……遅いんで、気を付けていらしてください」
『うん。じゃ』

 通話を終え、どれくらいで来るのだろう、と時計を確認する。と同時にもう一度専務に会えると、胸が躍る自分がいた。
 ばか。何喜んでんの、私。専務はただ届け物をしてくれるだけなのに。
 落ち着かせるように深呼吸をして、私はソファーに捕まりながらゆっくり立ちあがる。
 専務お茶飲んで行ったりするかな……お湯沸かしておいたほうがいいかな?
 なんて考えて、キッチンでヤカンに水を入れようとすると、ピンポーン、と部屋のインターホンが鳴った。

「はっ!?」

 早すぎる到着に、つい手にしていたヤカンをすぐ元の場所に戻す。
 専務!? 早くない!? っていうか早すぎでしょっ
 私は壁に手をつきながら、できる限り急いでドアまで移動する。ちなみに我が家は狭いので、キッチンのすぐ横にドアがあるのだ。念のため。
 ドアを開けると、さっきと変わらない専務の姿があった。

「あ……」
「や。悪いな、こんな遅くに」
「いえ、大丈夫です。明日から年末年始休業ですし……でも、電話から大して時間経ってませんよ? なんでこんなに早いんですか??」

 私がちょっと困惑気味に問うと、専務があー……と言ってポリポリと頭を掻く。
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