日常に、ほんの少しの恋を添えて
 私の告白に、専務の目がパッと見開かれる。

「このタイミングでこんなこと言ってすみません。でも……もうこれで専務に会えなくなるのかと思ったら、言わずにはいられませんでした。私……」

 言いながら視線を落とし、自分の手をじっと見つめる。するとこの瞬間、私の体は専務の腕に包まれる。
 突然の専務の行動に、私は口をパクパクさせ、すぐ横にある彼の顔を凝視した。そんな私を見て、専務は可笑しそうにブッ、と噴き出した。

「俺も」
「えっ……」

 私の耳の辺りで、クスクスと専務の笑い声が聞こえる。

「はっきり言わなくてごめんな。俺も好きだよ。長谷川のことが」
「!!」

 思わず体を専務から離して彼の顔を凝視する。私が驚いていると、専務が困ったように笑った。

「びっくりすることもないだろう? 俺、割と態度に出してたつもりだったし、前看病してもらってるときついぽろっと好きだって言っちまったし……聞こえたろ?」
「ええっ!! あれ、やっぱりそうだったんですか? 私てっきり空耳だと思い込んで……」
「ひでえ」

 そう言って笑うと、専務が私を自分の胸に引き寄せる。こんな近くで専務を感じるのは初めてで、私の顔に熱が集まりだした。

 ――嘘みたい。専務と両思いだなんて。だけど……
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