日常に、ほんの少しの恋を添えて
そうこうしているうちにホテルに到着。専務に言われ先に車を降りホテルのラウンジで専務と合流してから食事会の会場へ向かう。
指定された和食処が見えてきた辺りでいきなり専務が立ち止まった。そしてくるりと私の方へ振り返る。
「昨日話したとおり、相手方の常務なんだが、酒癖が悪いんだ。俺がいるときは守ってやれるが、もし万が一俺が中座した際に何か言ってきたり、された場合は長谷川の判断で逃げるなり対処してくれ。わかったな?」
「え……? は、はい。でも逃げたりなんてしたらまずいのでは……」
「いや、それは……あ、悪い」
話を途中で遮った専務の視線の先に顔を向けると、会食の相手と思わしき中年の男性がこちらへ歩いてくるのが見えた。
年齢は50代前半、と言ったところだろうか。髪を整髪料でなでつけシルバーフレームの眼鏡をかけた、少し気難しそうな見た目の岩谷常務。
そちらへ歩み寄って挨拶を交わした専務と私は、そのままその会食の相手と食事処へ移動した。八畳ほどの広さの座敷に通されテーブルの上を見ると既にコース料理の鍋がセットされていた。
――ほお、お鍋……美味しそう……っていかんいかん、今は仕事中だから! 食べ物の誘惑に負けてはいかん……
「長谷川、こちら橋上工業の岩谷常務。で、岩谷さんこちら私の秘書の長谷川です」
「長谷川です。よろしくお願いいたします」
紹介を済ませたとたん、目の前にいる岩谷常務が私の顔をじーっと見つめてくる。
指定された和食処が見えてきた辺りでいきなり専務が立ち止まった。そしてくるりと私の方へ振り返る。
「昨日話したとおり、相手方の常務なんだが、酒癖が悪いんだ。俺がいるときは守ってやれるが、もし万が一俺が中座した際に何か言ってきたり、された場合は長谷川の判断で逃げるなり対処してくれ。わかったな?」
「え……? は、はい。でも逃げたりなんてしたらまずいのでは……」
「いや、それは……あ、悪い」
話を途中で遮った専務の視線の先に顔を向けると、会食の相手と思わしき中年の男性がこちらへ歩いてくるのが見えた。
年齢は50代前半、と言ったところだろうか。髪を整髪料でなでつけシルバーフレームの眼鏡をかけた、少し気難しそうな見た目の岩谷常務。
そちらへ歩み寄って挨拶を交わした専務と私は、そのままその会食の相手と食事処へ移動した。八畳ほどの広さの座敷に通されテーブルの上を見ると既にコース料理の鍋がセットされていた。
――ほお、お鍋……美味しそう……っていかんいかん、今は仕事中だから! 食べ物の誘惑に負けてはいかん……
「長谷川、こちら橋上工業の岩谷常務。で、岩谷さんこちら私の秘書の長谷川です」
「長谷川です。よろしくお願いいたします」
紹介を済ませたとたん、目の前にいる岩谷常務が私の顔をじーっと見つめてくる。