日常に、ほんの少しの恋を添えて
 だけど。


「……いや、それは、ない……」

 冷静になれ、私。
 相手は大企業の御曹司だ。それに対して私はただの秘書だ。しかもまだ秘書になってから数カ月しか経過していない、新米秘書。そのうえここんとこ専務に迷惑ばかりかけてしまっているのだ。

 こんな私を好いてくれるなんて、とてもじゃないけど思えない。

「なんで私、無理めな人に……」

 私は胸にストールを抱いたまま、その場にへたり込んだ。


 彼氏に振られてから数ヶ月後。私は新しい恋をした。
 自分の上司である、専務に。
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