恋愛預金満期日 
 僕が席に戻ると、神谷が心配そうに声を掛けてきた。


「何の話だったんですか?」

「ちょっといいか?」

 僕は神谷を休憩室へ誘った。


 自動販売機で紙カップのコーヒーを二つ買い、神谷に渡した


「東京の本店へ異動だ……」
 僕は呟くように言った。


「ええ―!」

 神谷が悲鳴を上げた。

「そうだよな…… なんで僕が……」


「先輩、気付いてないんですか? ここ数か月の実績の上昇した企業の殆どが先輩の担当です。融資の見極めが凄いって噂です。それに海外支店と対応も手早いし…… 言ったじゃないですか、先輩は出来る人なんだって。だから、この異動は適切な判断です」

 
「そうなのか? 東京って……」

 僕は下を向いた。
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