恋愛預金満期日 
「はい! 何ですか?」
 彼女は少し戸惑ったように聞いた。


「実は…… 異動が決まりまして……」


「えっ。何処へ?」


「東京です」


「東京? 遠いですね……」

 彼女は意外にも残念そうな顔をした。


「ええ……」


「その異動は、海原さんにとって良い事なんですか? すみません。私、銀行の事とか良く分からなくて……」


「ええ…… 周りからは、栄転だって言われています。僕も、正直驚いています」


「そうなんですか! 良かったぁ。海原さんにとって良い事なら、嬉しいです」

 彼女の以外な言葉に僕は驚いた。


 彼女がそんな風に僕の事を思ってくれるなんて、思いも寄らなかった……


「でも…… 英会話が出来なくなってしまうんです。すみません……」

「いつ、異動なんですか?」

「来週末です……」

「急ですね……」

「あの……」

 僕はコーヒーカップを手にしたが空だったので、慌てて水を一口飲んだ。
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