恋愛預金満期日 
「先輩、どうでしか?」

 神谷が、先に昼食を取っている僕に声を掛けてきた。

 後ろには美也も居て、二人は僕と同じテーブルに座った。


「どうって? プロポーズしたよ」
 僕はぼそっと言った。


「えっ。マジですか?」


「え―。プロポーズ!」
 美也が大きな声を上げた。

 僕は慌てて美也に「し―っ」と人差し指を立てた。


「雨宮さんの返事は?」
 神谷が神妙な顔つきで聞いた。


「何も言わなかった……」


「じゃあ、返事待ちって事ですか?」
  美也が目を輝かせている。


「まあ、そんなところだ……」

「先輩、成長しましたね…… 気持ち伝える事が出来ただけでいいじゃないですか?」


「そうですよ。海原さん東京ですよ! 上司からのお見合いとかも、これからどんどんありますよ。新しい出会いもあるかもしれないし。大丈夫ですよ」


「あのさあ、まだ、返事もらってないんだけど…… 慰めるのは断られてからにしてもらえる?」

 僕は冷ややかに二人を見た。


「いやだなあ、先輩。断られるとは限らないじゃないですか?」


「断られると思っているくせに! いいよ。本当の事だ……」

 僕はいじけて、残りのご飯を一気に口にした。


「海原さん。返事待ちの間ドキドキですよね。祈っていますから」
 美也が慌てて言った。


「そうですよ、先輩。結婚妄想とか今なら出来るじゃないですか?」
  神谷も慌てフォローしてきた。


「もういい。ほっとけ!」

 僕の言葉に、二人が笑い出した。


 その笑いに僕の重い気持ちは救われた。

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