好きになった彼は幽霊でした。
お昼はたまに夏菜ちゃんと食べる事もあるけれど、ぼーっと噴水の上から溢れ出る水の音を聞いたり、たまに現れる猫を撫でたりして、昼休みを過ごすのがいつもの日課。
寂しいやつだと思う人もいるかも知れないけど、つかの間に流れるゆったりした時間は意外に心地よかったりする。
ふと、上に視線を向けると、図書室の窓が見えた。
「え━━━…?」
私が驚いた理由は、一瞬図書室の窓に見えた人影。
その人は私に手を振っていて、瞬きをしたら、もう居なくなっていた。
そして驚いた理由はもう一つ。
それはその人が優馬君にそっくりだった事。
いや…確信はないけど、たぶん彼だと思う。
もしかしたら彼に会えるかもと思った私は、図書室へ向かって走り出した。階段を駆け上がり、図書室全体を見渡す。
しかし、彼は居なかった。
私、なにを期待していたんだろう…。
不確かな存在の幽霊を探すなんて、よく考えたら変だよね…。