好きになった彼は幽霊でした。
心の中で願い唱え続けていると、不意に優しい声が降ってくる。
「雪姫ちゃん、もう目を開けても大丈夫だよ。」
聞き覚えのあったその声に上を向く。
「ゆ…ゆう…ま…くん…?」
まだ震えている手から、握り締めていたお守りが床に落ちる。そんな私を見て、優馬君がふわっと抱きしめてくれた。
「大丈夫…大丈夫だよ、雪姫ちゃん。」
冷たい体からは、温かい思いが伝わってきた。
その思いが恐怖心を和らげてくれたおかげで、安心した私は涙が止まらなくなった。
「よしよし。大丈夫だから、もう泣かないの。」
優馬君がしばらく頭を撫でてくれて、やっと気持ちが落ち着いた。
「…ごめんなさい…もう大丈夫…ですっ…。」
私がそう言うと、優馬君は体を離してくれた。
「落ち着いた?」
「はい、もう大丈夫です。ありがとうございました…。」